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闇の花道 天切り松 闇がたり 第一巻 浅田次郎著

浅田次郎といえば『鉄道員』が映画にもなったので有名だが、残念ながら私はまだ読んでいないし、
映画も観ていない。

最近、漫画の『かぶく者』と『ひょうげもの』を友人から借りて読んだ後すぐに読み始めたのが、
この本であった。
そんな訳で頭はすっかり時代物で、お侍さんの頭や着物がワイワイしている。

そして何より、この本の面白かったこと!

明治時代に仕立て屋の銀次郎なる悪玉の親分の元に、九つの歳で売られていった松蔵は、あるいきさつでその銀次郎親分の代わりに街を仕切っている、細目の安吉親分の元に引き取られることになる。
その親分の手下である、振袖おこん、坊主の寅弥、黄不動の栄治、書生の常次郎に見守られながら、松蔵は天切り松として、立派な盗人に成長していく。

今はすっかり年の老けた天切り松が、趣味で(!)泊りに行く留置場で繰り広げる物語は、留置人のみならず看守達や署長までも魅了し、時代の闇に葬り去られた過去を紐解いていく・・・。

闇がたりなんて初めて聞いた語り方はもちろんのこと、物語の面白さや登場人物の江戸っ子ばりばりの
話し方がかっこよくって、グングン引き込まれてしまう。

5話(五夜)のショートストーリー、そのどれもが読み甲斐があって泣かせてくれる。
人情、義理に心意気を何より一番に生きたキャラクターの素敵なこと。

昔は演歌や人情なんて敬遠していたけれど、子供を三人持ってこの歳になって、
ようやくその面白さが分かりだしたのかもね。

人間、単純で感情的で、色々複雑なことこの上なくって、思うようにならないことばかり。
だからこそ物語があって、泣いたり怒ったり笑ったり喜んだり。

そんな風に至福の時を過ごさせてくれる、素敵な作品である。

第四巻まで手元にあるので、これからますます楽しみだ。
by enjoy-wales | 2012-01-26 23:50 |